イギリスのTier1グローバルタレントVisaへの合格体験

私は2011年頃から、イギリスにTier4やTier2のVisaで滞在しており、2021年12月にTier2からGlobal Talent Visaに切り替えた。このビザは永住権とほぼ同等に自由度が高く、イギリスでの居住や働くことにほとんど制限がない(フリーランスも出来るし、起業も可能だ)。もし日本の優秀なエンジニアが、将来イギリスで就職したいがVisaが取れるか不安。。。って考えている場合は、この記事で紹介するGlobal Talent Visa (グローバルタレントビザ)に挑戦する価値はかなりあると思う。このビザに関する情報が日本語でほとんどなかったので、この記事を読んでくれた方が少しでも考える機会になったらと思って書いた。

英語版の記事はこちら

UK Tech Nation Global Talent Visaとは?

UK Tech Nation Global Talent Visa(元Tier1 Exceptional Talent Visa)とは、学術、芸術文化、またはデジタルテクノロジーのいずれかの分野でリーダーとして活躍してる向けのビザである。自分はデジタルテクノロジーの分野向けで出願したが、各分野によって若干出願要件が違う。デジタルテクノロジー分野はTech Nationという機関が出願者の査定を行なっており、公式ウェブサイトに最新の必要な要件は全て書いてある(なお、この記事に書いてある要件は2021年9月に出願した時点のもので、要件の詳細は常に変わっているので公式ウェブサイトを常に確認した方が良い)。

要するに、イギリス政府としては優秀な人材にはイギリスに来て活躍して欲しいので、優遇したビザを発行している(オーストラリアとか他の国もエンジニアのような分野は常に人不足なため、同じようなスキームで海外から優秀な人材を呼び寄せようとしている)。

ここで引っかかるのがこの”優秀(Exceptional)”についてだ。自分がこのビザの存在を知った時も、そもそもどれくらい優秀でなければビザ要件に満たすのかが不明だった。ウェブサイトを見るとノーベル賞とかチューリング賞とか恐れ多い賞について言及されていて、一見雲の上の存在の人用のビザに見えるが、実は念入りな準備と公で証明できる実績があれば、凡人の自分でも受かるような気がすることが分かった。

海外で暮らしたり働いたことある人なら分かると思うが、何をするにもビザがネックになり、それを理由に海外に飛び出して新たな人生に挑戦するのを諦める人が非常に多い。イギリスで働きたい場合に最も一般的なのは、Skilled Worker Visa (元Tier2)という、就職先の会社がビザのスポンサーになってくれるビザか、日本からイギリスの子会社や支店に出向するIntra-company Transferというビザがあるが、働くには色々と制限が多い。

  • そもそもこれらのビザは大企業しか提供してないことが多いので、就職先として(好き嫌いに関わらず)大企業のみしか選択肢がない。なのでイケイケのスタートアップとかに入りたくても、ビザ発給枠に制限があったりして、それで断られることがかなりある。
  • イギリス国内にいる間は、途中で仕事を辞めたり転職の合間に無職になって休憩期間を取ることが出来ない(まあ日本では習慣的に、履歴に穴が開くとか理由でそもそも転職間に休みを取ることが少ないと思うが)。
  • 自分で起業したり、副業やフリーランスといった形態で働けない。

その点、Global Talent Visaはこのあたりの制限が全くないので、ほぼ永住権と同じ自由度が手に入る。 仮に今勤めている会社がSkilled Worker Visaを出してくれてビザの心配はないって人でも、長期的によりVisaの制限がなく自由に働きたいと思っていてGlobal Talent Visaの要件を満たしていそうだと思ったら、出願を試してみる価値は十分あると思う。

ステージ1への出願準備

Global Talent Visaへの出願は2段階のステージがあり、(1)Tech Nationからビザの承認審査に受ける(2)Home Officeにビザの申請を行う必要がある。

大変なのはステージ1の方で、ステージ2は他のビザの手続きとほぼ変わらず事務的な手続きをちゃんとすればほぼ間違いなく通る。

適性基準

Global Talent Visaは2種類あり、Exceptional TalentとExceptional Promiseがある。Exceptional Talentはテクノロジー分野で職務経験5年以上でリーダーシップ経験が豊富な人向けで、Exceptional Promiseは職務経験5年未満でリーダーとしての素質を発揮できるポテンシャルがある人向けだ。どちらの場合も1つのMandatory Criteriaと2つのOptional Criteria (複数の基準から自分が満たせそうな基準を2つを選択)を満たす必要がある。

自分はExceptional Promiseで応募し、Mandatory Criteriaは

  • Show they have been recognised as having potential to be a leading talent in the digital technology field (デジタルテクノロジー分野でのリーダーとしての人材のポテンシャルがあることを示すこと)

で2つのOptional Criteriaは以下を選択した。

  • At least 1 example of proof of recognition for work beyond the applicant’s occupation that contributes to the advancement of the field(本業の仕事以外でデジタルテクノロジー分野の発展の貢献の実績を最低一つ示すこと)
  • At least 1 example of exceptional ability in the field by academic contributions through research endorsed by an expert.(アカデミック分野での貢献や専門家からの評価の実績を最低一つ示すこと)

ちなみに選ばなかったが、他の2つのOptional Criteriaは

  • At least 1 example of innovation as a founder of a product led digital technology company or as an employee working on a new digital field or concept(プロダクト中心のデジタルテクノロジー会社の創業者または従業員としてイノベーションの例を最低一つ示すこと)
  • At least 1 example of significant technical, commercial or entrepreneurial contributions to the field as a founder or employee of a product-led digital technology company(プロダクト中心のデジタルテクノロジー会社の創業者または従業員として技術的、経営的な貢献の例を最低一つ示すこと)

なぜこの2つを選ばなかったかは、自分の勤務会社がテック系でもコンサルティング会社だったため、”プロダクト中心”という条件に引っかからず不適性だと言われないか懸念があったためである。そのため、消去法で本業外での貢献とアカデミックでの貢献を中心に適性基準を選んだ。

提出書類

適性基準を選んだら、次に提出する書類を準備する必要がある。これらの書類を通して、自分が3つ全ての適性基準に満たしていることを示さなければならない。提出書類は

  • 志望動機署
  • 履歴書
  • 3通の推薦状
  • 適性基準に満たすことを示す最大10つの書類

志望動機署

志望動機署は最大1000字で、主になぜこのビザが必要か、イギリスに来たら何をする予定か、どのようにイギリスのデジタルテクノロジー分野に貢献できるか、などを記述してTech Nationの審査員に自分がイギリスのデジタルテクノロジー分野に貢献できる優秀な人材であることを説得するための書類である。他に提出する書類についても触れつつうまくまとめて、自分の過去の実績から、なぜ自分にビザを出すとイギリスの将来に良いかを書く必要がある。

履歴書

履歴書はA4最大3ページで、自分は主にKedroというオープンソースへの貢献と、Imperial College Londonでのリサーチの実績を主に書いた。PythonやPandasといった自分が使えるスキルについても少し書いたが、転職用の履歴書とは違い、どんな技術を知っているかより、自分の貢献がどれくらい機械学習のコミュニティーにインパクトを与えたかを中心に書くように意識した。

3通の推薦状

デジタルテクノロジーに精通してるシニアの方から3通の推薦状が必要である。推薦者は3名とも別の組織に勤めている必要があり、同じ勤め先の上司から1通以上もらうことは出来ない(元上司が今は別の会社で働いている場合は問題ないらしい)。私は、元上司の2名(どちらも既に自分の勤め先であったQuantumBlackを退職して、別の会社で働いていた)とImperial College Londonの修士論文の指導教員に推薦状をお願いした。推薦状は依頼から実際に完成するまで時間がかかるので早めに前もって依頼したり、ドラフトを手伝うなどして出願準備に遅れが出ないように注意が必要だ。

適性基準に満たすことを示す最大10つの書類

適性基準を満たしていることを説得するために最大10つの書類が提出できる。書類の中身はかなり自由度が高いが、自分は以下の書類を提出した。公式ガイドにいくつか例が載っているのでそれも参考になる。

どれもスクショをただ貼っただけではなく、追加説明を書いて、なぜそれぞれの書類が自分の適性基準を満たす証拠になるかを説明した。あと3つの適性基準を全て満たさないとビザはもらえないので、書類と推薦状をバランスよく分散して、どの基準も満たしていることを説得できるように心がけた。

上記の全ての書類が揃ったら、Tech NationとHome Officeのウェブサイトに全ての書類を提出すれば、あとは結果を待つだけとなる。待っている間は正直かなりメンタル不安定になった(受かんなかったらどうしよう。。とか考えたりして)が、待つ以外何も出来ない。晴れてステージ1を合格したら、次はステージ2の実際のビザ申請の段階に進むことが出来る。

ステージ2準備

ステージ1の出願を提出してから、約3週間後に合格の通知を無事もらうことが出来た。ここを通過すれば、ステージ2は事務的な処理のみなので、他のVisaと同じくやれば問題なく進むことが出来る。イギリス国外から申請をする場合はこのリンク先 国内から申請する場合はこのリンク先が参考になる。 主にやることは2つで

  • 必要なVisaとHealthcare surchargeの費用の支払い
  • イギリス国内から申請の場合は、Visaセンターに予約を取り、BRP (biometric residence permit)という滞在中に必要な証明カードの発行手続きを行う

既に別のVisaでイギリス国内で働いていた場合は、Visaの切り替えが完了したら、雇用主に切り替えた趣旨を伝えておくと良い。

申請準備に役に立った外部リンク

  • Tech Nation Visa Guide: Tech Nationの公式ガイド。ここに書いていることが多分一番大事である。

  • Tech Nation discourse forum: Global Talent Visaを取得したメンバーが有志で運営しているフォーラムで、質問を直接聞けたり、別の人が投稿した過去の質問やディスカッションが見ることが出来て、かなり役に立った。

  • Michelle Hua’s website: 他の人の申請の体験談がかなり載っており、どのような人がVisaを勝ち取っているか理解するのに役に立った。

この記事を読んでくれた日本人の方が、より多くイギリスへの海外就職の夢を実現出来たら本望です。